道端の鳩

突然の鳩のフン

生命の「性」にオスとメスしかないのはなぜか

 どこかのWebページの入力欄で、性別を選択する機会があった。


 男・女・その他。


 「その他」はもちろん、LGBTへの配慮なのだが、これを見て僕はこんなことを思った。

 

 「男女以外の生物学的な性はありえないのか?」

 

 実際、地球上の生物で有性生殖をする生物は、精子を産生するオスと卵子を産生するメスが交配することで受精卵を発生させるわけで、それ以外の性的役割を持つ性はない、はず(あったら教えて)。単為生殖を行う生物もいるし、雌雄同体もいるし、性転換をする生物もいるがそれらはまあ割愛しよう。

 このように有性生殖生物には2種の性しか存在しないが、なぜ第3の性がないのだろうか。なんら科学的裏付けはないが、自分なりに仮説を立ててみた。

 

 そもそも、なぜ生物は有性生殖をするのか。これは遺伝的多様性を生物種内で確保するためだと解釈できる。背が高かったり、視力が良かったり、肌が白かったり黒かったり、縮れ毛だったりストレートだったり、そういった要素が両親から子に伝わることで周囲の環境に適応できたりできなかったりする。

 

 多様性のために遺伝子を混ぜるのが目的なら、2体からよりも3体から混ぜたほうがよく混ざるのではないか? とも思えるが、ここで考えたいのが「染色体」と「減数分裂」だ。

 染色体はDNAをタンパク質で折り畳んだものだ。人間であれば、体細胞には23対、46本の染色体を持つ。これらに畳まれたDNAの長さの合計が3億塩基対だ。自分が中学生の頃はてっきり3億塩基対の一繋がりのDNAが1本あるものだと思っていたが、46本に分かれて細胞の核の中に存在しているのだ。このうち1対が「性染色体」と呼ばれる性を決定する遺伝子で、人間であれば片方がX、もう片方がYの個体がオス、両方がXの個体がメスと決定される。生物種によっては逆にヘテロの個体がメスでホモの個体がオスというのもある。
 そして、23対46本の染色体を持つのは「体細胞」での話である。子には各対のどちらかを伝えるため、「減数分裂」と呼ばれる染色体を半減させる細胞分裂を経て、23本の染色体を持つ精子卵子を作ることになる。染色体セットの量から、精子卵子を一倍体(x)といい、体細胞を二倍体(2x)という。
 生殖細胞のxとxが受精するから2xになる。単純な図式である。では、xとxとxが出会って3xとはならぬものか。

 

 3x、つまり三倍体になる生物はいる。魚や植物の一部に見られるが、三倍体は減数分裂を正常に行えないため生殖ができない。対になっていた染色体を引っぺがして2xをxにする減数分裂では、3xをうまく扱えないからだ。
 ……だよな、と思って検索したら2014年に三倍体のプラナリア減数分裂を経て有性生殖することを慶応が発見したそうだ。すごい。

 しかしそんな三倍体プラナリアでも、作るのは精子(x)と卵子(2xまたはx)であり、第3の性細胞はない。卵子精子精子っぽい何かで3xに受精しても良さそうなもんであるが。

 

 思うに、3つで1組というのは自然界では扱いづらいのではないだろうか。染色体は受精により倍になり、減数分裂により半分になる。受精卵の卵割は2つに分裂し、4つに分裂し……と半分に分けて倍々にしていく。1細胞を3分割する細胞分裂は想像がつかない。もっと根本を見ればDNAですら2本の鎖からできている。地球上の生物は「2」という数字に縛られているのかもしれない。

 まあ個体の生殖活動を鑑みても、3体が出会わないと受精できないというのはコストが高そうである。1人のパートナーを探すのでも難しいのに、もう1人パートナーを探せといわれたらやっぱりコストが高いなあと実感するところだ。コストが高い反応は相応のエネルギーがないと発生しないのが自然の掟である。

 

 以上が最近ぼやぼやと考えていたことである。2に縛られた地球上の生物に、第3の性はきっとコストが高すぎる。

 ……では「生物」ではなかったら? 細胞に寄生して増殖する彼らウイルスが、1つの宿主細胞に複数粒子がDNAないしRNAを送り込んだら? もはや性とはいえないが、そんな多様性の取り方もありえるのかもしれない。